ルイス・キンタナ: アグアニーレ
Luis Quintana: Aguanilé
ルイス・キンタナはパリを拠点に活躍しているプエルトリコ出身の若手作曲家です。この作品はサンテリア(ヨルバ族に由来するアフロ・アメリカンの宗教)がテーマとなっています。以下、作曲家によるプログラムノートの抜粋です。「サンテリアにおいて、アグアニーレはしばしば水を用いてその場を霊的に清めることである。サックスのパーカッシブな音(あるものは「水中音」を連想させる)の探求の研究として想像されるアグアニーレは、この宗教的伝統に関連するリズミカルでダンス的な魔法の精神を指している。」サクソフォンの音のみで構成されている、短くも魅力的な作品です。(牛島安希子)
Qebrμs & Qebo:Orion
Qebrμs & Qebo: Orion
Qebrμs/Thomas Denis. フランス出身のIDM ミュージックプロデューサー・サウンドクリエイター。2018年2月に他界。 デジタル・グリッチ音を多用したユニークな音楽スタイル、常に音色はビートに合わせて過激に変化して、ノイズミュージックながらも非常に音楽的なのが特徴だ。(NAgie)
檜垣智也:オルガニカ
Tomonari Higaki: Organica
コロナ禍で制限された移動と呼吸から、ひとときの逃避を試みた空想的な音楽。遠くから聴こえる船の汽笛やそれを模した吹奏から得られたサウンドには、広い空間で深い息をしたいという生物としての渇望を担わせています。
なお本作は、昨年12月の「有馬純寿+檜垣智也デュオリサイタル with ヴァーチャル東京現音計画」にて発表した『オルガニカ/リトミカ/アクースマティカ』の第1曲で、今回はこの大ホールのスピーカーシステムのために再調整しました。(檜垣智也)
素材音の提供:橋本晋哉(セルパン・東京現音計画)、大石将紀(サックス・東京現音計画)
本田ゆか:自然 l6-B
Yuka C. Honda: Nature l6-B
Nature l6-Bは音楽家本田ゆかのエレクトロニクス、ソロプロジェクトEucademixのFarm Psychedeliaの一曲です。2020年の春、コロナ渦の影響でニューヨーク州のアップステートと呼ばれる大自然でいっぱいのエリアに引っ越して、そこで野生の動物や鳥たち、大きな自然の気候音を二十四時間聴く世界にはまりました。当地には元アーティストの人たちが集まって、経済採算などは無視で、労力を惜しまず手で草を抜きながら、そして土の微生物などから調整をしている素晴らしいファーマーたちに出会い大きく感銘を受けました。土の匂いや風や雨の記憶を感じる音を聞いていただけたらと思います。(本田ゆか)
マヌエラ・ブラックバーン:ジャヴァリ
Manuella Blackburn : Javaari
昨年に引き続きイギリスを拠点として活動しているマヌエラ・ブラックバーンの作品を取り上げます。タイトルの "ジャヴァリ"とは北インド発祥の弦楽器、シタールのブリッジ部分、またシタールが奏でる独特の音色を指す言葉でもあります。作品内で作曲家は様々な楽器音の探求の中でも特に声楽のメリスマのようにアーチを描く美しいピッチベンドに注目しています。作品は4つのエピソードで構成されています。多くの場合、シタールの音素材が前面に出てきますが、時には後退したり断続的に押し出されたりします。作品はリバプール・ホープ大学を拠点とするMilapfest(インド芸術開発トラスト)とのコラボレーションによって作曲されました。(牛島安希子)
ピエール・シェフェール:悲愴のエチュード
Pierre Schaeffer: Étude Aux Casseroles, Dite "Pathétique"
新刊「藤倉大のボンクリ・アカデミー」の電子音楽編でも取り上げたミュージック・コンクレートの古典を聴きましょう。シェフェールがターンテーブルと戯れてみつけた、機械的なリズムやピアノの音を加工してできた管楽器のような音など、電子音楽を作る根源的な喜びと遊び心が聴こえてきます。(檜垣智也)
ヴァツワフ・ジンペル:Fen
Wacław Zimpel: Fen
「Fen」はクラリネットが発する特徴的な“ノイズ”を焦点としています。古典的なクラリネットの音色からすると望ましくない雑音に思われがちですが、私にとってノイズこそクラリネットの最も興味深い要素であり、この楽器が自然界や地球そのものから生まれたものであることを思い出させてくれます。
“Fen”はアルト・クラリネットで即興演奏した音源にディレイやリバーブなどのエフェクトを加えた作品です。 表題は “fön”や“foehn”としても綴られる、いわゆるフェーン現象(風炎)を意味します。(ヴァツワフ・ジンペル)
バスティアン・ダヴィド:フライ・トックス
Bastien David: Fly-tox
バスティアン・ダヴィドも同じくパリを拠点としている新進気鋭の作曲家です。彼はオーケストラ作品などを主に作曲していますが、メタロフォンという微分音打楽器の発明なども行っています。今回の電子音楽作品、"Fly-tox “ ではデジタル効果を一切使用せず、自然の音のみをマイクロ編集して作曲されています。 "Fly-tox “は極めて毒性の強い殺虫剤とのこと。以下、作曲家によるプログラムノートです。
「ハエ、蚊、蛾、ナンキンムシ、ノミ、シラミ、アリ、ゴキブリ、スズメバチなどに殺傷力があります。Fly-Toxだけが人間やペットにとって安全です。すべての優良な家庭から入手可能です。研究所長 」(牛島安希子)
NAgie:201204:Stringss
NAgie: 201204:Stringss
2020年の作品。メインのノイズパートはノイズ素材の編集ではなく、1つのストリングスシンセサウンドのみから生成されています。それは音楽的にモーディングした変調を行うために、さまざまなエフェクトプロセッシングをおこなっています。(NAgie)