❶ 藤倉大/芯座(世界初演)
Dai Fujikura: Shinza for Koto (World Premiere)
この作品は箏奏者LEOさんに書いた箏協奏曲の中からの作品。LEOさんは今年、箏協奏曲を初演したばかりで(しかもパンデミックを吹き飛ばすかのように3回も演奏)、またこの後すぐにこの協奏曲の演奏が決まっている。だったら、『芯座』も弾けるだろう!ということで、ちょうど『芯座』としての世界初演の場所を探していたので、今回スペシャル・コンサートのオープニングに、とお頼みしました。
❷ 山崎阿弥/粒と波(世界初演)
Ami Yamasaki: Particle/Wave (World Premiere)
山崎阿弥(声)
Ami Yamasaki(Voice)
山崎阿弥さんは、昨年のボンクリ2020前に、ボンクリに関わるアーティスト大集合での
Youtubeトークの時に初めてお会いしました。そこでも、披露してくださったのですが、山崎阿弥さんの作品、声、体を使った音楽創りが面白く、僕もトーク中に「今、なにやりました?」みたいにびっくりしたものでした。なので、今年は是非それを芸劇のコンサートホールで!とお願いしました。楽しみです!
❸ 東野珠実/円環の星筐-笙と尺八合奏のための-(世界初演)
Tamami Tono: Hoshigatami VII “ Annulus “ for Ensemble of Sho and Shakuhachi (World Premiere)
星筐の会[東野珠実(笙)、三浦礼美(笙)、五月女愛(笙)]、尺八アンサンブル 風雅竹韻[村澤寶山、柴香山、長谷川将山、風間禅寿、吉越瑛山、笠原道樹]
Ensemble Hoshigatami[Tamami Tono(Sho) , Remi Miura(Sho), Ai Saotome(Sho)], Fugachikuin[Hozan Murasawa, Kohzan Shiba, Shozan Hasegawa, Zenji Kazama, Eizan Yoshikoshi, Douju Kasahara](Elegant Bamboo Ensemble)
笙は、呼吸の圧により金属リードに発生する微小な振動を竹管に共鳴させ、さらに複数の管を円環に束ねることで和音を紡ぐことが特徴の楽器です。一方、尺八は、ただ一本の竹管で多様な奏法と音色をもって音楽を描き出すミラクルな楽器です。この作品では、いずれも豊かな倍音がハイパー・ソニック・エフェクトをもたらす笙と尺八を円環に配し、実空間を共有する一つの楽器を構成する事で、響の銀河を現出します。(東野珠実)
❹ ヤン・バング&藤倉大/Night Pôles River [feat.アルヴェ・ヘンリクセン、アイヴィン・オールセット](世界初演)
Jan Bang &Dai Fujikura: "Night Pôles River” [feat. Arve Henriksen and Eivind Aarset](World Premiere)
※本プログラムは電子音楽作品の上演となります。エレクトロニクス:永見竜生[Nagie]
コンサートホールで電子音楽を聴く、というのはかなり昔から行われていること。僕も若い時は演奏者のいない電子音楽を大ホールへ聴きに行ったものでした。2000席近いホールになると、ホールそのものが響く楽器。コンサートホールで聴く電子音楽そのものが、絶対に家では聴けない稀有な体験です。また、ボンクリで、ホールの響きを知り尽くしたエンジニアと作品をよく知るエンジニアとで創る空間・時間は、このボンクリに来ないと絶対味わえません。
パンデミックの中、ヨーロッパ中がロックダウンの時、ずっと家にいるチャンスを逃さないようにと思い、ヤン・バングに「一緒に何か作ろうよ」と声をかけ、目的も無く作り始めました。僕はシンセサイザーを演奏。音作りから何から一からやって。ネット上のファイルのやりとりをする中で、ヤンがプンクトに出演する人たちに声をかけてくれ、素晴らしい演奏が追加されていきました。作業を重ねる中、気がついたらアルバムが出来上がっていた。アルバムは来年リリースされるらしく、その中から長時間かけて、今回のボンクリのためにヤンと僕がコラージュをし、初めてボンクリで発表。
❺ ジョージ・ルイス/Shadowgraph 5(日本初演)
George Lewis: Shadowgraph 5 (Japan Premiere)
アンサンブル・ノマド、ノマドキッズ
Ensemble NOMAD, NOMAD Kids
『ジョージ・ルイス』と言ったら、おそらく皆さんもそうかと思いますが、まずトロンボーン奏者として知りました。大学時代に買った(ボンクリ・フェス2020でもフィーチャーされた作曲家)ハイナーゲッべルスのECMのCDでの印象的なトロンボーン。そのすぐ後に即興要素を含む作品で有名な作曲家だと知り、さまざまな作品を僕も聞きました。たくさんある中、どれがいいかなと思っていて、ジョージご本人からボンクリの感じだと「Shadowgraph 5」が一番いいのではないかなと提案していただきました。どんな響きになるのか楽しみです。
❻ 八木美知依/桃の実(世界初演)
Michiyo Yagi: Peach Fruit (World Premiere)
八木美知依Talon(箏アンサンブル)
[八木美知依(21絃箏・歌)、磯貝真紀(箏・歌)、高橋弘子(17絃箏・歌)、木村麻耶(25絃箏・歌)]
Michiyo Yagi's TALON (Koto Ensemble)
[Michiyo Yagi, Maki Isogai, Hiroko Takahashi, Maya Kimura]
昨年、藤倉大さんが作曲したリモート演奏のための「Longing from Afar」を演奏する機会を頂きました。様々な流派の名実ともに優れた演奏家たちと小学生1人に演奏してもらいました。リモート演奏ですから当然のことながらズレが生じましたが、個々の演奏には説得力があり、綺麗に揃える必然を感じさせない、魅力的な作品になったと感じました。箏は流派によって、または個人によって、拍の捉え方や半音の感覚も違います。「Longing from Afar」を機にそれらを肯定的にとらえ、様々な箏の種類を交えて共鳴させるサウンドを楽しめないかと考え、本作を書きました。いつか見た、桃畑の夜を想像しながら。(八木美知依)
❼ マリオ・ディアス・デ・レオン/2匹の蛇の祭壇
Mario Diaz de Leon: Altar of two serpents for two flutes
アンサンブル・ノマド[木ノ脇道元(フルート)、内山貴博(フルート)]
Ensemble NOMAD[Dogen Kinowaki(Flute), Takahiro Uchiyama(Flute)]
マリオは実は昔から知っているけれど、会ったことがない。お互い意識して20年近く、という感じでしょうか。というのも、ボンクリ1年目にゲストで来たクレア・チェイスが所属するアメリカのインターナショナル・コンテンポラリー・アンサンブル(ICE)で僕と同じくらいの時期に頻繁に取り上げられていた作曲家だったから。いつもかっこいい曲を書く人だな、と思いつつ。今回、「ボンクリで初めてマリオの作品を!」と思って、初めてマリオと何回もメールのやりとりをし、何作かマリオからの提案のあったものから、これ!と思ったものを選びました。よく読むと、クレア・チェイス(ともう一人のフルート奏者)のために元々書かれたものだそう。それも運命的。
❽ 大友良英/新作(世界初演)
Otomo Yoshihide: New Work (World Premiere)
大友良英、アンサンブル・ノマド、ノマド・キッズ
Otomo Yoshihide, Ensemble NOMAD, NOMAD Kids
毎年大友良英さんがボンクリのために作品を創ってくださる、という非常にラッキーなフェスです。
その代わり、毎回、前日までどんな作品になるか分からない。今年は、昨年に続く新作として、アンサンブル・ノマド、ノマドキッズのこどもたちと「楽しくやれるジャズ的なコンポジション」を考えているらしいので、僕も楽しみに待っているところです。
❾ 藤倉大/infinite string
Dai Fujikura: Infinite String
アンサンブル・ノマド(指揮:佐藤紀雄)
Ensemble NOMAD(Conductor: Norio Sato)
infinite stringはニューヨーク・フィルハーモニック、NHK交響楽団、アンサンブル・レゾナンスの三者の共同委嘱で書かれた弦楽オーケストラのための作品です。今までに何曲か自分の娘の誕生や発育からインスピレーションを受けた作品を書いてきました。今回はそれの原点である、受精後の細胞分裂がどんどん行われて、あらゆるDNAの情報が発現し、命が宿る、という事からアイデアを得ました。弦楽オーケストラは、他の楽器のオーケストラと違い、エレクトロニクスのテクスチャーのように自由自在に変化できる音の素材だと僕はいつも思います。最初の激しいトレモロから音域も音色も自由に変化していき、そのトレモロから次のセクションへと行く時などは、電子スタジオでつまみを回して音色を徐々に変えていっていくような感覚で作りました。
「レア グラヴィティ」「マイ バタフライズ」に続く、3部作の一つです。