メインコンポーザー:ミシェール・ボカノウスキー
プログラムA「サーカス」(1994)、「太陽の鼓動」(2008)
プログラムB「天使」(1980)
プログラムC「気になる3つの部屋」(1976)、「フォン・ヴァリエーション」(1988)
プログラムD「幼年時代」(2011)、「ラプソディ」(2018)
プログラムE「タブー」(1983-1984)、「孤独なピアニストのために」(1974)
プログラムF Hideki Umezawa+Shohei Amimori CD『Critical Garden』より+新作2作
I. CD『Critical Garden』より
(1)梅沢英樹+網守将平「débris dans le jardin I」(2014)
(2)梅沢英樹+網守将平「débris dans le jardin II」(2015)
(3)梅沢英樹「débris dans le jardin III」(2015)
(4)梅沢英樹+網守将平「Painted Wall」(2013)
(5)梅沢英樹+網守将平「cracked_oriented; frz」(2016)
II. 新作発表
(6)網守将平「Evaporation of Shibuya - Requiem for temporary enclosure」(2021)
(7)梅沢英樹「Nine Structures / Le jardin en movement」(2021)
プログラムG YOSHI WADA CD『Earth Horns with Electronic Drone』(1974)
プログラムH 新作発表
(1)岡田智則「SA・DA・KO」(2021, 日本初演)
(2)せきみつほ「It’s made by Hand Claps」(2021, 世界初演)
(3)馬 筠茹(マ・ユンジュ)「最後の雫」(2021, 日本初演)
(4)永松ゆか「カーニバルの夜」(2021,世界初演)
(5)中島弘至「記憶」(2021, 世界初演)
プログラムI 新作発表
(1)大塚勇樹「Angel Blood」(2021,世界初演)
(2)ヤマシタユミ「Uranus」(2021,世界初演)
(3)佐藤亜矢子「Dispersion du passé」(2021,世界初演)
(4)池田拓実「Borrowed Scenery 2」(2021,世界初演)
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(1)大塚勇樹「Angel Blood」作者のコメント
別件のコンピレーション・アルバム用の作品と締め切りの時期が重なっていたため、レコーディング環境や音素材を共有しつつほぼ同時並行で制作。モジュラー・シンセサイザーの音や最近録り貯めていた環境音を軸に使用してはいるが、これまでの作品との大きな違いとして、それぞれの音色の位相のぶつかり合いによって生じる音響の複雑化を目指すのではなく、位相を整理した上で音色や空間の積層化をより強調するという試みに舵を切ったところにあるように思う。
PROFILE
大塚勇樹 |京都府出身の音楽家、サウンド・エンジニア。大阪芸術大学で電子音響音楽の作曲およびアクースモニウムの演奏と音響技術を学び、同大学院博士(前期)課程を修了。Molecule Plane名義ではこれまでに2枚のアルバムを発表し、コンピレーション・アルバムへの参加も多数。また、モジュラー・シンセサイザーの演奏家として多数のイベントに出演している。マスタリング・エンジニアとしてはこれまでに檜垣也、福間創などの作品を手掛けている。
天王星が発見された18世紀は、世界中で革命が起こり、様々な科学的な発見があった。新種のウイルスの出現によって、世界中が共存している実感を余儀なくされている今、同時にそこから抜け出したいというエネルギーが様々な形で表れているように思う。また機械と人類の共存関係もより深くなり、「機械が意志をもったら?」「それは人間とどう違うか?」と、昔から誰もがもつ疑問の答えが、もうすぐ出るかもしれない。この曲では機械のエラーや偶発的に発生した音を使用している。人間と機械、個であることと、共存すること。両者の狭間で発生するエネルギーは様々な形で表れていく。
PROFILE
ヤマシタユミ |大阪芸術大学在学中に、電子音響音楽の制作を始める。以来、様々なコンサートに出品している。その他、パフォーマーやダンサーとのコラボレーションやTV番組への楽曲提供等を行っている。
(3)佐藤亜矢子「Dispersion du passé」作者のコメント
この一年半、音を採集する旅に出ることができず、それどころか家にとどまることが良しとされ、広い世界へ耳を開く機会が激減してしまった。その代わりに我々は、コンピュータという小さな箱、小さな画面の中で、いくつかの出会いや発見や経験を重ねていた。この作品は、私が過去数年間に制作し、発表したあるいは発表していない楽曲やデモオーディオを、その小さな箱から掘り起こしてきて、思い切り蹴っ飛ばし、狭い部屋に散らかした結果である。狭い部屋へ耳を開く。過去を発見し、蹴散らす。
PROFILE
佐藤亜矢子 |作曲家。主に電子音響音楽/アクースマティック音楽の領域で活動。作品はICMC、SMC、NYCEMFなどの国際会議や音楽祭に多数入選し、これまで10カ国以上で上演、放送されている。2019年東京藝術大学大学院音楽研究科博士後期課程修了。フランスの作曲家リュック・フェラーリの作品研究で博士(学術)取得。現在、玉川大学、大阪芸術大学非常勤講師。
(4)池田拓実「Borrowed Scenery 2」作者のコメント
男声とコンピューターのための「Borrowed Scenery」(松平敬委嘱、2021年10月1日初演予定)と素材の多くは共通しているが、異なる現れ方をする。ほとんどが短いループかワンショットであるため、音楽の時間内構造――時間軸や確率の変調も含むため、リズムやテンポという旧来のカテゴライズからは少々外れる気がする――と改めて向き合うことになった。
PROFILE
池田拓実 |コンピュータ音楽家。作曲補助プログラムLotusRootの開発と公開。主な作曲作品はタンブッコ・パーカッション・アンサンブル、東京現音計画、実験音楽とシアターのためのアンサンブル、ヴォクスマーナ等の演奏団体、演奏家によって委嘱、演奏されている。木下正道・多井智紀と共に「電力音楽」として活動。2020年5月に自主制作CD「drop E / emulsificación / descending」を発売。
プログラムJ 新作発表
(1)林恭平「自転車」(2021,世界初演)
(2)松宮圭太「波立ち」(2014, 2021改作初演、日本初演)
(3)渡邊裕美「L’immoral 背徳者」(2012, 日本初演)
(4)マイリス・ラーナル「小さな自画像1」(2021,世界初演)
(5)ヴァンサン・ロブフ「水の流れに」(2021,世界初演)
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あなたは、最近、頬にあたる風を感じていますか?この場の空間において、頬にあたる風を感じてみませんか?
PROFILE
林恭平 |大阪芸術大学大学院作曲コースにて、七ツ矢博資、上原和夫、宇都宮泰、檜垣智也に師事する。フランスにて1979年より続く伝統ある電子音楽コンクール、ルイジ・ルッソロ電子音楽賞の日本代表の陪審員として2016~2019年に任命されている。2019年度、若尾裕が主催する『Creative Music Festival 2019』の講師を務めた。 2020年、BBC RADIO 3にて自作の電子音響音楽作品が放送される。
この作品は、文化遺産の日に際して、パリ在住の作曲家と詩人が共同して作品を作るプロジェクトにおいて制作した。Etel Adnan、Gabrielle Althen、Lionel Yung-Allegretによる3つの詩の朗読を記録し、その朗読に内在するリズム、響き、旋律に導かれながら言葉の音を再構成した。朗読と再構成された言葉の音が折り合いながら、全く異なる音の世界、虫の声、デジタルの歪み、さざ波へと変質する。
PROFILE
松宮圭太 |東京藝術大学大学院、パリ国立高等音楽院、IRCAM作曲研究課程修了。フランス学士院より在マドリード・フランス・アカデミー第87代芸術会員に任命。クラングシュプーレン、現音 Music of Our Timeなど国内外で楽曲上演。「ギター小協奏曲」(ソフィア王妃芸術センター 2017)、ハイブリッド・ヴィオラのための「奇想曲」(アルス・ムジカ2015)、舞台音楽「阿修羅」(大駱駝艦・壺中天2015)など。大分県立芸術文化短期大学講師。
(3)渡邊裕美「L’immoral 背徳者」作者のコメント
フランスの小説家アンドレ・ジッドの作品に着想を得て制作された作品。音素材はサイズも材質も異なる多様な球体をピアノの弦や金属製のプレートなどの上でバウンドさせたものの録音である。このバネのような反復する動きは、小説における精神の揺らぎを、また、下行するサウンドは避けられない運命を意味している。作品の最後では音響が螺旋状に上昇するように聴き取れるが、まるで肉体から離れた精神が迷いながらも天に昇っていくかのようである。もともと8ch作品だが、今回はステレオ版での上演。
PROFILE
渡邊裕美 |東京藝術大学大学院修士課程修了後渡仏、パンタン県立音楽院にてDEMを取得、サン=テティエンヌ大学でコンピュータ音楽の職業修士課程を修了する。主な受賞歴は Musica Nova 2017 ミクスト部門第1位、CCMC2011にてACSM116賞受賞、Banc d'eaasi 2013入選など。繊細な色彩の移ろいが生み出す仮想の音響空間を求めて音楽制作を続けている。近年は幾何曲線を用いた音の空間投影のコントロール、及び音楽と映像・身体表現の連関などに関心を抱いている。
(4)マイリス・ラーナル「小さな自画像1」作者のコメント
各楽章のタイトルを掲載する。1「17歳、バザー」/2「日曜日のソファーでの思索/3「バラード」/4「幸福の家、サン・ドニのムーラン・ジェモー通り8番地」/5「土曜日の夜、真夜中のソファでの思索」/6「想像上の夜」
PROFILE
マイリス・ラーナル |1990年にバスク地方のサンパレに生まれ。7歳からピアノを学ぶ。2006年にバイヨンヌ音楽院に入学し、作詞、作曲、ピアノ、伝統的な歌を学ぶ。2009年には、トゥールーズ音楽院に入学し、電子音響作曲、器楽・声楽の作曲、映像のための音楽、伝統的な歌唱のクラスに参加。2012年に電子音響作曲のDEM、器楽・声楽で作曲の賞、映像のための音楽制作のディプロマ、2013年に歌を専門とする伝統音楽のDEMを取得。パリに移り、パリ高等芸術教育拠点の電子音響作曲部門でドニ・デュフールとジョナタン・プラジェのクラスに参加。2018年にはUPEMとGRMでアク―スマティックとサウンドアートの修士号を取得。 歌うことと作曲することは、彼女のキャリアにおいて重要であり、数多くのプロジェクトを展開する。Alcôme音楽カンパニーと想像の世界(物語、ストーリー、ポッドキャストなど)をテーマにしたMyr'のメンバー。音楽院や音楽学校での指導のほか、学校やEHPADなどでのトレーニングコースや地域プロジェクトでも活躍。
(5)ヴァンサン・ロブフ「水の流れに」(世界初演)作者のコメント
この作品では「歩く」ということをテーマにしています。水の音を聞きながら、ゆっくりと歩きます。川や池が近くにある様々な場所で録音された音源から音の風景を再構築し、その中を歩くことによってドラマツルギーを作りだします。
PROFILE
ヴァンサン・ロブフ |作曲家、電子音響音楽家。世界各地(フランス、日本、イタリア、オーストリア、アメリカ、中国など)で演奏活動を行う。Motus音楽カンパニーおよびFutura Festival(フランス)の芸術監督。2021年よりヴィルバンヌ音楽院(フランス)にて電子音響作曲クラスの教授。
プログラムK 新作発表
(1)牛山泰良「影におぞけて」(2021,世界初演)
(2)新美 術 with ながねっ子「岩滑遠望」(2021,世界初演)
(3)田代啓希「Terminal Point」(2021,世界初演)
(4)天野知亜紀「カソケキヒカリ」(2021,世界初演)
(5)アルマンド・バリス「Drifting over black」(2021,世界初演)
(6)渡辺愛「LDJ」(2019器楽版/2021, 4ch Mix版初演)
※本プログラムのみ4チャンネル再生です。
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実体が見えないのに影だけが蠢き、呟いている。実害がある訳ではないけどおぞましい、おそろしい。実体は近くにいるのかも知れないし遠くにいるかも知れないし私かも知れないしあなたかも知れない。いつか突然異形となってその身に降りかかるかも知れない。おぞましい、おそろしい。その影は本当にこの作品でしょうか。
PROFILE
牛山泰良 |電子音楽、サウンドアート作家、音響エンジニア、エリザベト音楽大学非常勤講師、IAMASシステム管理業務専門職。アクースマティック・アート団体『hirvi』に所属し多層化立体音響装置『アクースモニウム』を用いたコンサートやワークショップ等を行っている。古楽器やお祭り等の「伝統的な何か」を取り込み、そこにあった情報を異質に変化させる事で違和あるいは混乱を誘う様な作風であり、その先にある忘我の時を目指している。
(2)新美 術 with ながねっ子「岩滑遠望」作者のコメント
愛知県半田市出身の童話作家 新美南吉が、大正~昭和初期の岩滑(やなべ)村の音を、オノマトペで作品に記録したものを素材として、ふるさと岩滑の音風景を想像して制作した。尚、一部、「鳥」・「蝉」・「雨」などの環境音は長根幼稚園の子どもたちと協働したワークショップ時の音を使用している。
PROFILE
新美 術 |大阪芸術大学在学中に電子音響音楽に出会う。MAXによるアルゴリズミック・コンポジションを学ぶ中で、自身の務める幼児教育分野への応用を始める。音楽理論を学ぶ前の幼児期にこそ、身の回りで鳴り響く音そのものへの興味、音楽する楽しさ・表現する喜びを伝えるべく、その方法論を日々模索中。
(3)田代啓希「Terminal Point」作者のコメント
本作は私が今まで作品制作を続けてきた中で、特に思い入れのある1台のシンセサイザーから生み出された音のみを使用して作曲した電子音響音楽作品である。変化の少ないドローンと細かい動きのあるノイズで構成される本作は、それぞれの音自体には具体的な意味を持っておらず、それらの音の組み合わせによって1つの世界を作り上げている。私が個人的な作品制作のテーマに掲げている「自由なイメージを想起できる音」の通り、聴き手には自由な解釈でそれぞれの情景を想起してもらいたい。
PROFILE
田代啓希 |神戸市出身。大阪芸術大学大学院博士課程前期芸術研究科芸術制作専攻作曲研究領域(電子音楽)修了。電子音響音楽の作曲・演奏を主な活動フィールドとして、「自由なイメージを想起できる音」をテーマに作品制作に取り組む。またエンジニアとして、音響技術のみならずLIVE配信に関する技術サポートも行っている。これまでに、CCMC(2016~2020東京)、FESTIVAL FUTURA (2019,2020仏)、ボンクリ ・フェス(2019,2020東京)などで作品を上演。CCMC2019にてFUTURA賞、2020にてMOTUS賞を受賞。電子音響音楽・アクースモニウム演奏を檜垣智也、音響技術を宇都宮泰の各氏に師事。
三重県亀山市のある住宅の一室で展覧会準備のために掃除をしていた時、古い家屋の質感や香り、窓から差し込む淡い陽の光などを感じて今作の着想を得た。掃除した部屋からは、長年住んでいた人の気配だけでなく、作品展示などで比較的最近に使用されたあとも見受けられたことから、長い時間を経て混在する仄かな気配を表現した。
PROFILE
天野知亜紀 |同志社女子大学コンピュータ音楽コース卒業、愛知県立芸術大学大学院作曲領域修了。音と映像、鑑賞者の相互作用を意識した楽曲やサウンドインスタレーションなどを手掛ける。 CCMCkyoto(2018,2019)、アート瀬戸内(2017,2018)、瀬戸内国際芸術祭 (2019) ,ミッドジャパン音の芸術祭(2020)などで作品上演を行う。電子音楽の作曲家グループ「hirvi」、彫刻と音楽によるユニット「symbi」に所属。
(5)アルマンド・バリス「Drifting over black」作者のコメント
「Drifting over black」は、迷いながら、瞑想的で揺らめく空間をドリフトして、緊張しつつも柔らかく、さらに有機的な音域へと徐々にシフトしていきます。
PROFILE
アルマンド・バリス |フランス・イタリア出身の作曲家、即興演奏家、電子音響音楽家。Alcôme音楽カンパニーのディレクター兼共同設立者。グランシャロン音楽院では電子音響作曲を教えている。La Muse en Circuitとコラボレーションしている。彼はクラシックや実験音楽、さらにはロックやメタル音楽に影響を受けた個人的な美学を展開する。「黒」の持つ詩性及び象徴性から音楽のインスピレーションを得ている。INA-GRM、La Muse en Circuit、SACEM、Motusをはじめとした様々なフェスティバルや団体から委嘱を受けており、フランス国内外の多くの国で演奏されている。ドニ・デュフール、ヤン=マルク・ヴェバ、ジョナタン・プラジェのもとで電子音響作曲のトレーニングを受けた後、INA-GRMで電子音響音楽とサウンドアートの修士号を取得。2013年には、彼が定期的にコンサートを開催しているAlcôme音楽カンパニーのアクースモニウムをデザインした。
器楽版の「LDJ」はヴィオラと電子音響によるミクスト作品です。2019年10月26日、永福町ソノリウムにて甲斐史子さんのヴィオラ演奏で初演されました。この曲の中にはリトアニアとドイツと日本の作曲家が同居しています。2012年の12月半ば、私は友人のドイツ人作曲家と一緒にパリ郊外の市場を回っていました。その時の音を使ってデッサンしてみましたら、妙にはまったのが18世紀リトアニアの作曲家オギンスキによるポロネーズでした。リトアニアのL、ドイツのD、日本のJでLDJ。ボンクリでは新たにミックスした4チャンネルヴァージョンでお届けします。(ヴィオラ:甲斐史子/録音:竹内朗/ミックス:森永実季/ポロネーズのチェンバロ演奏:本間みち代)
PROFILE
渡辺愛 |フィールドレコーディングを含む電子音響音楽を中心に活動する。東京音楽大学を経て渡仏、パリ国立地方音楽院修了。東京藝術大学大学院博士後期課程修了。リュック・フェラーリ研究で博士号を取得(学術)。TEM主催JAPAN2011受賞(イタリア)、国営ラジオでの放送(France Musique)、FUTURA(フランス)、ICMC2018(韓国)等国内外で評価を得る。東京藝術大学・尚美学園大学・昭和音楽大学各講師。日本電子音楽協会理事。先端芸術音楽創作学会会員。JWCM女性作曲家会議メンバー。