[1]モートン・フェルドマン/サムシング・ワイルド・イン・ザ・シティ―マリー・アンのテーマ
(ホルン、チェレスタ、弦楽四重奏のための)
Morton Feldman: Something Wild in the City: Mary Ann's Theme, for horn, celesta and string quartet
"Morton Feldman Collection, Paul Sacher Foundation, Basel”
この作品は、僕の家の台所にあるラジオからたまたま流れてきた音楽で、なんだか素敵だけど、一体誰の曲なんだろう、と曲の終わりの解説を聞くと、モートン・フェルドマンの映画音楽とあり、びっくり。その日に別件で、たまたまこの録音をリリースしているカイロスというレコード会社の社長とやりとりをしており、そこの追伸で、この作品ってどうやって楽譜を手に入れることができるのかな?ボンクリでできないかな?と書いて見たところ、カイロスの社長がザッヒャー財団に問い合わせてくださり、ザッヒャー財団がフェルドマンのご遺族に連絡してくださり、次の日僕が朝起きたら、「ボンクリフェスでのみ、演奏して良い」と言われて楽譜がメールで送られてきていました。
というわけで、この作品を入れないわけにはいかない、それにスペシャル・コンサートの最高のオープニングの曲だ、と思いました。
[2]挾間美帆/颯(はやて)
Miho Hazama: Hayate
挾間美帆さんは数年前に坂本龍一さんのオーケストラのコンサートのリハーサルでお会いしたことがあり、僕の友人で僕も数曲コラボをしている三味線奏者の本條秀慈郎さんもお友達であることで活動は知っていました。今回挾間さんの作品で何かできないかな、と連絡して数曲送ってもらったところ、サックスカルテットでおしゃれな曲があったので、サックスはボンクリフェスのこのコンサートには無いので、これを弦楽四重奏に編曲してくださりませんか?とお頼みしたところ、快く承諾してくださりました。
[3]八木美知依/通り過ぎた道
Michiyo Yagi: “The Road Not Taken”
八木美知依さんとはもう10年以上も前から知り合いで、光栄にも八木さんから4ページにもわたる「いつか箏協奏曲を書いてください」という手書きのお手紙をいただいたりしており(まだ残念ながら実現していません)いつかご一緒したいな、と思っていました。八木さんの沢山出ているカッコいいアルバムを持っています。なんとPunktのインプロヴァイザー達ともすでにコラボをしているんですね、なんと世界は狭い!今回は八木さんから:
「「通り過ぎた道」という地唄の発声を用いた歌と17絃箏の曲です。
間奏で17絃のアルペジオをループさせ、その上で違う音色でソロをとるのでエレクトリックの楽器を用います。」
八木さんらしい何のジャンルにも属しない音楽だと思います。
[4]「通り過ぎた道」PUNKTライブ・リミックス
PUNKT Live remix of “The Road Not Taken” by Jan Bang, Erik Honoré, Eivind Aarset, Nils Petter Molvær and Dai Fujikura
恒例のノルウェーPunkt軍団と僕によるライヴリミックス。これは僕個人的に弾いててとても気持ちいい。ニルズペッターのトランペットと、僕が弾いたら即「取られて」加工されて音が飛んでいく、、横見たらヤン・バングがニコニコしていて、今聞いたばかりのリミックスの元になる音源、今回は八木さんの「通り過ぎた道」の断片が聞こえる。。。。
[5]テリー・ライリー/In C
Terry Riley: In C
去年のボンクリを見た人で「ぜひたまには誰でも知ってる名曲を!」という事で、ボンクリでは異例の、本当に誰でも知っている名曲を選んでみました。僕もチャイコフスキーの交響曲は知らないけど(幾つあるんでしたっけ?)ライリーのIn Cは何回も演奏したことがあるし、聞いたことがあります。今回はアンサンブル・ノマドの奏者の子供達、ノマドキッズも参加する予定です。
[6]坂本龍一/honj Ⅰ~Ⅲ(日本初演)
Ryuichi Sakamoto: honj Ⅰ~Ⅲ (Japan premiere)
本條秀慈郎さんが坂本龍一さんに作品を委嘱していたのを知っていたので、たまたま日本初演の予定はあるのか聞いてみたところ、まだない、というので、ぜひ!と思いこのコンサートで日本初演していただくことにしました。坂本龍一さんの三味線ソロの音楽、どんな曲なんでしょう!
[7]大友良英/新作(世界初演)
Yoshihide Otomo: New work (world premiere)
僕が単に一方的にファンな大友良英さん、去年のボンクリフェスの打ち上げで「俺、来年も出たいなあ!」っておっしゃってくださったので、すかさず「ぜひ!」と。
僕もああいう風に音楽が作れたらなぁ、といつも思いながらリハーサルの様子や、本番の演奏を見ています。
[8]藤倉大/春と修羅(映画『蜜蜂と遠雷』より)
Dai Fujikura: Spring and Asura
この作品はほんの数ヶ月前に思い立って入れることにしました。
おそらくみなさんもご存知のベストセラー小説『蜜蜂と遠雷』が10月4日公開の映画になったのですが、そこに出てくる架空の作曲家が書いた架空のピアノ曲「春と修羅」は僕が書いています。物語の中で重要な部分を占めるこの作品。映画公開よりボンクリフェスがちょっと前なので、おそらくこの「春と修羅」を聞くのはこのコンサートが初なんじゃないかな、と思います。今回はピアニストは萩原麻未さんに頼みました。
映画では4人のピアニストがそれぞれ違う即興のカデンツァを演奏しますが(その4つの即興を僕は作曲しています)、萩原さんに「お好きなバージョンを選んでください」と言っていて、僕も今の時点でどのカデンツァを弾くのか、分かりません。
[9]藤倉大/ホルン協奏曲第2番(アンサンブル全編版世界初演)
Dai Fujikura: Horn Concerto No.2 (World premiere of complete ensemble version)
この作品はホルン奏者の福川伸陽くんが個人委嘱してくださった協奏曲で、世界初演はベネチア ビエンナーレで行われました。その協奏曲のオーケストラの部分をアンサンブルに作曲し直し、前半は別のところで初演されたのですが、今回は全編を通したアンサンブル版の初めての演奏となります。
福川くんとは前にもいくつものソロの作品を委嘱してくださり、福川くんと長時間にわたるホルンの奏法の実験をし、僕は普通のホルンの奏法があまり好きではないので、どうやったらホルンっぽくない音がホルンから出せるのか、を日本の大スターホルン奏者、福川くんを捕まえて実験をしていました。この協奏曲にもいくつもの「なんじゃこりゃ?」みたいないつものホルンの音じゃない音が満載です。