誰でも楽しめる! 無料プログラム
アクースモニウム(電子音響音楽の演奏装置)奏者として活躍する檜垣智也が監修し、デヴィッド・トゥープ、ランガム・リサーチ・センター、ベランジェル・マキシマン、武満徹らの音楽をお聴きいただけます。
『電子音楽の部屋』では、子どもから大人からまで「だれでも」、11時から19時まで「いつでも」、電子音楽との「上質」な出会いを提供します。
「だれでも」というのは子どもも大人もということはもちろん、初心者も上級者もという意味もあります。電子音楽を上級者だけのものにしていてはもったいない。電子音楽はドレミのメロディやリズムの要素が少なめで、変な音がたくさん。まさに「音」そのものを楽しむ音楽です。子どは変な音を──ときには大人の嫌がる音を──出しては遊んでいます。そんな子どもをみていると、じつは大人より子どものほうがむしろ素直に音と上手くやれているような気さえします。もちろん大人は大人ならではの聴き方──趣向的・知的・教養的なアプローチ──もできます。
また、この部屋は「いつでも」聞けるように入退場が自由です。他のワークショップの隙間にちょっとのぞくもあり、時を忘れて瞑想しながら聞くもありです。お客さんが少ないときは、寝転んで、うたた寝しながら聴いても面白いです。他人の聴いている姿を眺めながら聴くというのもできそうです。どんな聴き方も自由です。好きな聴き方を見つけて、楽しんでください。
気を配っていることは他にもあります。体験の「上質」さです。様々なスタイルのある電子音楽ですが、共通することはスピーカーを通してきくことです。もちろんパソコンや携帯型音楽プレーヤ、自宅のオーディオシステムでプライベートで簡単にきくことができます。しかしたいていの電子音楽の作曲家は、作品の音質にもこだわっています。制作した同じ環境で聴くことは難しいですが──原理的には作曲家のスタジオで聴くしかないわけで──、可能な限り高音質な装置を使って適切な音量で体験することが大切なのです。そこでボンクリでは音楽スタジオで使用されている高音質・高出力のスピーカで音源を再生します。耳で聞くだけでなく、体全体で空気の震えを感じ、皮膚で気配を掴んでください。いつもイヤホンで音楽を聴いている人は、その違いに驚くでしょう。
最後に、電子音楽をうまく聴くコツを伝授しましょう。とくに入門したて、または、これから電子音楽に挑戦しようという方は参考にしてください。それはあなた自身が音になって、音楽という言葉のないストーリーにダイブすることです。やり方は簡単です。まず目を閉じて、落ち着いて静かにしてください。そしてスピーカーから聴こえてくる音の位置や動きを心の目で追ってみてください。次第に空間を縦横無尽に飛び交う音の迫力にびっくりするはずです。そうすればしめたものです。もうしばらくすると音が体の中に入ってきて、あなたが音そのものになるような感覚がおとずれてきます。映画の主人公に感情移入する、あの感じです。あとは音楽の世界を自由に楽しむだけです。
せっかくボンクリにいらっしゃったなら、ぜひ電子音楽の部屋にお立ち寄りください。長いプログラムのお目当てをめがけてきても、空いた時間にふらりときていただいてもかまいません。この部屋には「上質」な“新しい音”が「いつでも」溢れていて、「だれでも」入ることができます。
檜垣智也